症例登録のための手引き

この手引きは、令和3年度厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)により作成しました。

この手引きでは、症例登録にあたって特にご質問のあった点などについて、まとめております。

2 基本情報②

2親等以内の親族はどのような範囲になりますか?
祖父母・両親・兄弟姉妹・子・孫を含みます

参考URL
https://www.nenkin.go.jp/section/guidance/onegai.files/01.pdf

糖尿病網膜症の病期の区別はどのように考えればよいですか?
眼科の診断名に従ってチェックを付けるのがよいと思います.左右で異なる場合には状態の悪い眼の状況をチェックしてください. 改変Davis分類における網膜症病期と眼底所見との対応関係,ならびに改変Davis分類と新福田分類の網膜症病期の対応関係は以下になります.
改変Davis分類
網膜症病期
眼底所見 新福田分類で対応する 網膜症病期
単純網膜症 毛細血管瘤
網膜点状・斑状・線状出血
硬性白斑・網膜浮腫
(少数の軟性白斑)
A1:軽症単純網膜症
A2:重症単純網膜症
増殖前網膜症 軟性白斑
静脈異常
網膜内細小血管異常
(網膜無血管野:蛍光眼底撮影)
B1:増殖前網膜症
増殖網膜症 新生血管(網膜・乳頭上)
網膜前出血
硝子体出血
線維血管性増殖膜
牽引性網膜剥離
A3:軽症増殖停止網膜症
A4, A5:重症増殖停止網膜症
B2:早期増殖網膜症
B3:中期増殖網膜症
B4,B5:末期増殖網膜症

参考URL
https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/diabetic_retinopathy.pdf

4 検査値

尿定性試験の結果から尿蛋白量を推定することは可能でしょうか
『日本腎臓学会腎機能(GFR)・尿蛋白測定委員会報告書(2001) 』には,各メーカーによる尿試験紙の表示値(蛋白)が掲載されています.

参考URL
https://jsn.or.jp/jsn_new/iryou/kaiin/free/primers/pdf/43_1.pdf

一例を抜粋して示します
尿蛋白定性値 ± 1+ 2+ 3+ 4+
半定量値(mg/dL) 15 30 100 300 1000
なお,CKDの重症度分類や糖尿病性腎症病期分類において正確な病期分類を行うためには尿Cr値の測定が必須であり,尿蛋白(-)~(+)の場合は尿アルブミン値の測定をご検討下さい.
eGFRの推算式について教えてください.
日本人のGFRの推算式としては,血清Cr値(mg/dL),年齢,性別を用いて以下のものが使用されています.
男性 eGFR(mL/分/1.73m²)=194 x Cr-1.094 x 年齢-0.287
女性 eGFR(mL/分/1.73m²)=194 x Cr-1.094 x 年齢-0.287 x0.739
なお,下記サイトでは血清Cr値,年齢,性別を入力するとeGFRが自動計算・表示されます

参考URL
https://jsnp.org/egfr/
https://www.adpkd.jp/selfcheck/calc_gfr.html

J-DOMEのWEB入力画面では、eGFRは自動計算され、表示される仕組みとなっています。

5 処方薬

糖尿病治療薬の分類はどこを参照すればよいですか?
インスリン製剤,GLP-1受容体作動薬の見本の一覧表が下記に掲載されています.

参考URL
http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/insulin_list.pdf

また,日本医師会のホームページから『超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き3.糖尿病』が下記よりダウンロード可能です.12ページ目に,内服薬の代表的な一般名と商品名が掲載されています.

参考URL
https://www.med.or.jp/dl-med/chiiki/tebiki/R0105_shohou_tebiki3.pdf

なお,イメグリミン(ツイミーグ®)に関しては □その他 にチェックして下さい.
降圧剤の分類はどこを参照すればよいですか?
高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)が下記よりダウンロード可能です.

参考URL
https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/JSH2019_hp.pdf

253ページから降圧薬一覧が掲載されています.
なお,エサキセレノン(ミネブロ®)は □鉱質コルチコイド受容体(MR)拮抗薬 にチェックして下さい.
また,サクビトリルバルサルタン(エンレスト®)は □アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB) と □その他 の両方にチェックして下さい.

6 併発疾患

糖尿病治療薬の分類はどこを参照すればよいですか?
イベント発生時の循環器内科や心臓血管外科の診断名に従ってチェックを付けるのがよいと思います.心筋梗塞と狭心症の区別は,一般的に下記のように考えられます.
心筋梗塞:冠動脈の血管が完全に閉塞して,心臓への血液供給が大幅に減少もしくは途絶えてしまい,心筋が壊死した状態を指します.心筋マーカーの上昇を認めます.
狭心症:冠動脈の血管が狭くなり,心臓へ送る血液の量が少なくなっている状態を指します.
脳梗塞と一過性脳虚血発作(TIA)の区別はどのように考えればよいですか?
イベント発生時の神経内科や脳神経外科の診断名に従ってチェックを付けるのがよいと思います.脳梗塞と一過性脳虚血発作(TIA)の区別は,一般的に下記のように考えられます.
脳梗塞:脳の血管が完全に閉塞して,その先の脳組織への血液供給が大幅に減少もしくは途絶えてしまい,脳細胞が壊死した状態を指します.急性期脳梗塞はMRI検査(特に拡散強調画像)にて検出可能です.
一過性脳虚血発作(TIA):一時的に脳に血流が流れなくなり,神経脱落症状が現れる発作を指します.MRI検査で急性期脳梗塞を示す所見が認められません.

8 高血圧の基本情報・併発疾患

慢性腎臓病(CKD)の定義と重症度分類について教えて下さい.
『エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン 2018』が下記よりダウンロード可能です.

参考URL
https://cdn.jsn.or.jp/data/CKD2018.pdf

本ガイドラインに示されているCKDの定義と重症度分類は下記の通りです.
<CKDの定義>
①,②のいずれか,または両方が3か月以上持続することで診断する
① 尿異常,画像診断,血液,病理で腎障害の存在が明らか,特に0.15g/gCr以上の蛋白尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要.
② GFR <60 mL /min/1.73 m²
なお,GFRは日常診療では血清Cr値,性別,年齢から日本人のGFR推算式を用いて算出する.
<CKDの重症度分類>

参考URL
https://cdn.jsn.or.jp/data/CKD2018.pdf

付帯情報

糖尿病性腎症の分類について教えて下さい.
糖尿病性腎症病期分類は2014年に改訂されました.尿アルブミン値・尿蛋白値,腎機能により,第1期から第5期に分類されます.

参考URL
https://jsn.or.jp/academicinfo/ckd/dm_nephro.pdf

<糖尿病性腎症病期分類>
病期 尿アルブミン値(mg/gCr)
あるいは 尿蛋白値(g/gCr)
GFR(eGFR) (mL/分/1.73m²)
第1期 (腎症前期) 正常アルブミン尿(30未満) 30以上
第2期 (早期腎症期) 微量アルブミン尿(30~299)
第3期 (顕性腎症期) 顕性アルブミン尿(300 以上)
あるいは
持続性蛋白尿(0.5以上)
第4期 (腎不全期) 問わない 30未満
30未満 透析療法中 -